Sequence 13

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 三浦の説明によると、影山は17階の会議室にいるらしい。  エレベーターではなく階段を昇り始めた俺達の後ろに桜木谷が付いてくる。 「桜木谷さんはエレベーターで来て下さい」  数段先を走る三浦の声が反響した。  ヒール音がだんだん重くなっている桜木谷は、息を乱しながら「だ、大丈夫です。あと半分ですから」と無理に笑う。  俺達ディレクターから目を離すなと、上から言われているのだろうか。午前中ずっと付き纏われた阿南がこれを知ったら、また機嫌が悪くなるだろうから黙っておこう。  会議室と聞いてイメージするのは長机と椅子が設置されただけの堅苦しい部屋。しかし、実際は立食パーティ会場かと見間違うほど華やかで、和気あいあいとした空気に包まれていた。 「なんだ、ここは……」  目を疑う俺に、桜木谷は胸に手を当てて「会議室兼コミュニケーションルームです」と教えてくれた。インタビュイーを中心に役員や他の社員が集まっていると言う。 「この人達は何をしているのですか……?」 「交流会というか、決起集会というか。他部門の方々が集う機会はあまりありませんので、挨拶や情報交換をなされているのだと思います」  あー、なるほど。そういう事か。……って納得できん!  事前に聞いていたインタビュイーの人数は8名だ。けれど室内にはざっと40人近くいる。しかも奥にはドリンクコーナーらしきものがあり、中年のオッサン達のなかにはカクテルグラスを持っている奴も見える。今は昼間の14時だぞ。仕事は!?  部屋の入口で茫然と立ち尽くす俺の耳に、「瑠珂さん」と聞こえた。渚がトコトコと近付いてきて、俺の前でビシッと敬礼した。 「お疲れ様です」 「お疲れ様ですじゃねえよ、バカ! こんな所で何を油売ってるんだ」  叱り付けると、渚は唇を突き出し「休憩なしでずっと仕事をしてますよー」と生意気に言い返してくる。
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