Sequence 13

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「有給休暇が溜まっていてね。総務に休みを取れって怒られるんだ。本社にいても大した仕事をしていないから肩身が狭いし、こっちでの俺の役目は終わったから、この機会に少し羽を伸ばそうかと思って」 「……。どこに行くんだ?」 「南の島」  南の島……?  なんてアバウトな言い方だろう。東京より南緯の島がいったいいくつ有ると思っているんだ。  行き先が重要では無いとすぐに思い至った。順平が休暇を求める場所は、ココではないということだ。 「日程は? いつ帰ってくる?」  不安を悟られないよう気丈に質問を重ねた。  順平が一人でフラリと旅に出るのは昔からだ。学生の頃は毎月のようにアジア諸国に出掛けていて、居所が分からなくなったり、音信不通になったり、変な土産物が増えたり、なんてのはしょっちゅうだった。 「うーん……」  順平は腕を組んで考え込む。困ったような顔をしていた。  なんで……?  嫌な予感というのは本当によく当たる。パターンの確率でいうと数十分の一だと思うのだが、どうしてだろう。結局は自分にとって都合が良いか悪いか、この2つに1つなのかもしれない。  順平が曇りのない明るい表情しているから、俺は黙って順平の気持ちや考えが語られるのを待つしかない。 「可能な限り向こうに滞在するつもりでいる。たぶん有給休暇を使い切る前にパリに戻ると思う」  次はいつ帰るか分からない―――。  その言葉は今まで何度も聞いた筈なのに、足元から崩れるような焦燥感を覚えたのは初めてだった。
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