Sequence 18

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 桔梗は鋏を器用に持ち替え、こめかみ、耳の裏、襟足を整えていく。 「順平は知ってるの?」  髪を切る事を知っているのか、と聞いている。 「知らない。言う機会がないし」 「連絡を取らないの? あっちは毎日遊んでいるんでしょ?」  順平が休暇で日本を離れていることを既に知っているようだ。 「取らないわけじゃないけど。髪を切るのにわざわざ連絡するのもな」 「ま、そうだけど」  桔梗はつまらなそうに肩を竦めた。 「瑠珂も一緒に行けば良かったのに」 「どこに?」 「バカンス」 「仕事があるから無理だよ」  鏡に映る真剣な横顔が不満げに頬を膨らました。 「今は日帰りで海外旅行ができる時代よ。1日や2日ぐらい時間を作れるでしょう」  一泊二日で海外旅行をしろってか? 贅沢な話しだ。そんな時間があるなら俺は睡眠を貪りたい。 「たまには日本を離れてゆっくり二人で過ごすのもいいじゃない。海外なら男同士でくっついていても怪しまれないから気楽でしょ?」 「そうだな。のんびり過ごすとかそういう考えが俺に無いから、相談されないし、置いてきぼりをくらうんだろうな」  鋏の動きが止まった。  鏡越しに目を合わせ、桔梗は俺の感情を読み解こうとしている。 「そこまで分かっているなら追いかければいいじゃない」  あっさりとベストな答えを出してくる。思わず吹き出してしまった。  喉を鳴らして笑う俺を桔梗は咎めたりしない。自暴自棄になっているのを見透かされているのかもしれない。 「順平の欲しがっているものが桔梗には分かるんだな」 「順平の欲しいもの? そんなの知らないわよ。アイツは仕事もお金も最愛の人も全部持っているじゃない。これ以上なにを欲しがるって言うのよ」
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