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「どんなに苦手なタイプでも二時間は我慢して話し続けられる私が、彼女のときは30分も経たないうちにウンザリしていたのよね。どうしてかしら……」
桔梗は自分のことを不思議がる。
意気込んで藤白由香と会ったものの、桔梗には退屈な時間だった。
「順平と噂になる女の話ばかりされたからだろ」
「そう、それよ! 私は本人からパートナーは同じ歳の『男』だって聞いてるのに、あの子ったら噂だけの女の話しかしないの。しかも無駄に沢山仕入れていて呆れたわ。どれだけの時間と労力をかけて調べたのよって感じで……って、なんで瑠珂がそこまで分かるの?」
頭の回転が速い桔梗は気付くのも早く、疑いの目を向けられる。
「俺の時もそうだったから」
「ああ、そういうことね」
桔梗は簡単に騙された。
俺は嘘を嫌うのに、必要とあれば平気で嘘をつく。矛盾だらけの人間だ。
「それで、桔梗は藤白由香のつまらない話しを聞くだけだったのか?」
「そうよ」
「カマを掛けたりしなかったの?」
「カマ?」
何の事? と言いたげに首を傾ける。
「『順平の相手は女ではなく男なんじゃないのか』とか」
桔梗の目が驚愕に見開かれた。図星らしい。
狼狽えた桔梗は口を滑らせる。
「なんで瑠珂がそのことを知ってるの? あの子から聞いたの?」
俺は藤白由香から聞いていないし、そもそもそんな話しはしていない。
これは俺の憶測だ。桔梗の強かな性格を考えれば、なんの成果も得られず藤白由香との面談を終わらせるとは考えにくい。
それだけの理由なのだが、説明をするのが面倒だったので「まあ、そんなとこ」とテキトーに話しを合わせて誤魔化した。
「ああ、ごめんなさい……。軽はずみな発言はしないって気持ちを引き締めて臨んだはずなのに、あの子の話しがあまりにもお粗末で、私が期待していたものと全く違ったから、つい我慢が切れちゃったのよ……」
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