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「てことはアレか。朝生と七瀬の好みのタイプって同じなんだな」
梶さんがまた余計なことを言い出す。
「そういう事になりますね」とあっさり認める渚の横で、七瀬がひどく動揺していた。
誰と好みが同じでもいいけど、面食いだと思われるのだけは嫌だった。
「一緒なわけ無いじゃないですか。俺はアイツを初めて見たときイケ好かねえと思いましたもん」
「ひゃははは、マジか?」
梶さんが高笑いを上げて身体を起こした。「なんで? なんで?」と食い付いてくる。
「いつもヘラヘラ笑ってバカ騒ぎしてうるさかったから。あの甘ったるい声ものんびりした口調も耳障りだった」
今となってはどうでもいい事だ。なんでそんな昔のことを馬鹿正直に話してしまうのか、自分でも不思議だった。
「でも、その後で仲良くなって恋に発展したから付き合っているんですよね?」
さも当たり前のように渚が聞いてくる。
一般的な流れ、正しいプロセスに嵌め込まれるのもまた気に入らない。
「仲良くねえよ。嫌がらせで無理やり付き合わされたんだ」
「無理やり!?」
「嫌がらせ!?」
梶さんと渚が驚愕に目を丸めた。
しまった……。言わなくていい事まで口を滑らした。
「……違う。そこは付き合っている期間にカウントしていないんだ。今のは忘れてくれ」
「忘れるなんて無理だろ。そこまで話したんだ、このさい全部話せよ」
「そうですよ。そんな言い方をしたら気になるし、順平さんの印象が悪くなるじゃないですか。ほら、七ちゃんがショックを受けてる」
シートの背もたれから顔を出している七瀬が茫然と固まっていた。
コイツの中の順平像はどうなっているんだろう。少女マンガに出てくるイケメンよろしくバックに花でもしょっているのだろうか。
大きな勘違いをしている七瀬が憐れに思えてきた。
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