0人が本棚に入れています
本棚に追加
遊びレベルの練習試合を終えたメンバーは、それぞれ騒ぎながら駅へと歩いていく。楡太は、ライコがさりげなく寄ってきたことに気づき、優妃の位置を確かめた。優妃はミニバス部のマネージャーと差し入れのハチミツ漬けレモンについてさっきから話し込んでいるようだった。
「ここに来る途中、神社あったじゃん」
案の定、ライコが小さな声で斜め後ろから話しかけてきた。楡太は前を向いたままで神社の場所を思い出そうとした。
「ああ、そういえば」
「多分優妃は神社に入るのを嫌がるだろうから、鳥居の前で、後ろから優妃の肩をポンと叩くといいよ」
「なんで?」
「軽くでいいんだよ」
声が遠くなった。ライコは歩く速度を落としたようだ。それにつれて、前の方を歩いていた優妃がパッと振り返った。その目はつり上がっていた。
楡太は優妃と並んで、わざとゆっくり歩いた。他の集団はどんどん先に行き、もうすぐ神社が見えてくる、と思ったときに優妃の足が慌ただしくなったので、楡太も急いで優妃の背中を追いかけた。そして、目の前の細く平たい背中を見たとき、トンッと両肩を押した。
楡太と優妃の姿が見えないことに気づいたライコたちは、騒ぎながらも駅前で待っていると、なんだか晴れ晴れしたような顔をした二人が笑いながら、ライコたちに追いついた。「悪い悪い」と言いながらも、楡太の顔には明るい笑みが広がっていた。
最初のコメントを投稿しよう!