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先の落書きと同じように、僕は他の貼ってある紙の文章も順次読んでゆく……。
だが…いや、予想通りというべきか、紙に書かれているものもすべて、似たか寄ったかの内容である。
先程は、この家の住人が住んでいた時に貼ったメモ用紙か何かだと思ったが、これはそんなものではない。
ましてや落書きなどといったものでもない……壁に直接マジックで書いたものも含め、これらは全部、誰か、行方不明になった友人に対してその帰還を呼びかけている、そんな内容の伝言なのである!
「ひょっとして、これもかよ……」
そう独り言を口にして、不意にナオトがキッチンの方へと歩き出す。
そして、先程の音の原因であると判断を下した、そこの壁に貼ってある紙片へと電灯の光を当てた。
「やっぱり、これもだ……」
わずかの後、紙片のメモ書きを読んだナオトが、トーンの落ちた声でそう呟いた。
わざわざ彼の追って、それを見に行かなくてもわかる……それも、メモ書きなどではなかったのだろう。
こういった心霊スポットに落書きはつきものであるが、このような伝言の書かれているなんて話聞いたことがない……この場所に、こんなものがある必然性が感じられないのだ。
〝これ〟は、ここにあってはおかしなものなのである。
僕は、ここが心霊スポットであるのとはまた別の、どこか気持の悪い、〝違和感〟に対する恐怖というものを感じていた。
なぜ、こんな所にこんな伝言が貼ってあるのだろうか?
なぜ、こんなところに行方不明者に宛てた伝言が?
「そういえば、ここにまつわる都市伝説でこんなのもあったよな……」
そんな僕の疑問に答えるかのように、ナオトがぼそりと口を開いた。
「数人で惨劇荘に肝試しに行くと、その中の誰か一人が必ず行方不明になる……っていうの」
一瞬、皆の間に沈黙が訪れる。
「……ちょ、ちょっとやめてよ…」
わずかの後、ナミが沈黙を破り、怯えた声で訴える。
「あたしもその話、聞いたことあるような……」
一方、ユウカは妙に平静な口調で、抑揚なくナオトの話を補強する。
……その話は、僕も以前、どこかで聞いた憶えがある。
だが、この伝言を読んでも、なぜか今までそのことを思い出さなかったのである。
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