廃屋の伝言板

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 ……いや。というよりも、もしかしたら無意識に、それとこれとを結びつけて考えないようにしていたのかもしれない……。  それが示す結論は、あまり考えたくはないものであったのだ。 都市伝説ではこの「伝言」についてまるで触れられていないが、それもここを実際に訪れた当事者達が、それを口にするのを幅かっているのだとしたら……。 「ってことは……これって、その行方不明になった人に宛てた……」  その、あまり考えたくない恐ろしい結論を、ユウカが不注意にも口に出してしまう。  一度口に出してしまったら、もう考えないわけにはいかなくなってしまうというのに……。 「ねえ、だから、やめてってば……」  ナミは、泣きそうな声で再び訴える。 「もしそうだとしたら、四人でここに来たあたし達の誰かも……」  しかし、ユウカはそれでもやめず、さらにその先に待つ恐ろしい未来まで言葉にしようとする。 「い、いやあああああああーっ!」  ついに恐怖が限界に達し、耳をつん裂く絶叫とともに半狂乱のナミが部屋を飛び出した。 「う、うわあああぁぁっ…!」 「あっ! ま、ま、ま、待ってよおおっ…!」  それを合図にナオト、そしてユウカも大声を上げて、転げるようにその場から逃げ出す。  「お、おい! ちょ、ちょっと待てよっ!」  さらに一拍置き、僕も皆の後を追って慌てて一目散に駆け出した。  最初に逃げ出したナミは懐中電灯も持っていないのに、この闇の中をどう走ったものなのか? もう僕の視界の中からは完全に消え去っている。  いや、そればかりか次に出て行ったナオトやユウカの姿までもがもうすでに見えない。僕だけ一人置き去りにして、なんと薄情な連中なんだ!  それでも、三人の向かった先はわかっている。この状況下で出口以外を目指すバカはいないだろう。  僕は懐中電灯のか細い光を頼りに、無我夢中で暗闇の中を駆け抜けた。  実際には十数秒にも満たない短い時間だったと思うが、正直、僕はこの間のことをよくは憶えていない……。  気がつくと、僕は玄関を出てすぐの場所で、他の皆と一緒にぜえ、ぜえと荒い息使いに激しく肩を揺らしていた。 「み、みんないる? …ハァ…ハァ…」  僕は息を切らしながら、互いの顔も見えぬ暗闇の中、尋ねる。 「うん……」 「ええ……」  すると、ナミとユウカの声が暗闇の中から返ってくる。
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