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“第一王子に比べればとても知略に長けた厄介な存在……王位継承権を持つ世継ぎのなかで、今のところその炎の獅子を…一番警戒しておくべきではないかと……”
「………炎の獅子…」
ジャンはアサドを見据え小さく呟いた。
「なるほど…お前がその獅子か……」
挑戦的な目を向けてふっと笑ったジャンに、アサドは譲らない表情を返す。
やけに火花が散って見える──
愛美はお互いに引く様子のない二人をハラハラしながら見ていた。
なんだかお腹の子に悪い環境だ。そう思えてならない。
「なんとでも呼べばいい。ザイードには客を選ぶようにキツく言っておく」
「……っ…」
アサドは言いながら睨むジャンに背を向けると愛美の腕をまた掴んだ。
ジャンは歩き出した二人の背中を黙って見送る。
「…ねえ、どこに行くのっ」
「………」
長い足で歩くアサドに引っ張られながら、愛美は少し様子のおかしいアサドにそう声を掛けていた。
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