私の歌

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社会人二年目。初夏に変わる頃。 地元で働き始めて、ペーパードライバーだった私もなんだかんだ運転が上手くなった。行きはお気に入りのCDを聞いて、帰宅時はラジオをつけて帰る。天気予報を聞いてそのあと誰かのリクエスト曲を聴く。自分が忘れてた曲、新しいお気に入りの曲を見つけられるのがいいなあなんて思う。 Bマイナーから始まる曲が耳に入った。 まだ私が東京にいた頃よく聞いた曲だ。夏のじっとりと汗をかくあの都会の夜へ向ける憧れをこの曲で思い出す。 昼間どんなに暑くとも夜は涼しいこちらとは全く違う夜だった。 真夜中でもコンビニとか街灯とかそこら中の電気が付いていて、ちょっと不安はあったけど、夜の散歩は好きだった。特にあの人のうちに向かう時間はとてもウキウキする時間だった。 バニラとチョコ一個ずつアイスを買って 、溶けないかなあなんて心配しながら歩く。 チャイムをドキドキしながら押していた時が懐かしい。 部屋に入ると冷えた麦茶とあったかい紅茶を用意してくれてて、麦茶で喉潤してからアイスを食べる。 私がバニラ、あの人がチョコを食べるけど一口ずつもらいっこする。 「やっぱりチョコが1番だな」 「いやバニラが1番だね!」 なんて言い合いっこして自分のを食べる。紅茶でさっぱりさせた後、テレビを見たり本を読んだりそれぞれ好きなことをして、でもそばにいる。そんな関係がとてつもなく幸せだった。 彼は初めての彼氏で、私に自信の持ち方を教えてくれた人だった。 過去を振り返って後悔ばかりしている私に、視点の変え方を教えてくれた。 とても好きだったけど、人気者の彼のいる世界がまったく違うものに思えて、彼のいる世界の人に嫉妬している自分にも醜さを覚えて、一方的に身を引いてしまった。 せっかく彼が自信の持ち方も勇気の持ち方も教えてくれたのに。 私は今、背筋伸ばして生きてるよ。ありがとう。 そんなことを思って残りのフレーズを口ずさんだ。
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