失恋から始まる出会い

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 徐々に上がる太陽に幸蔵が重なって見える。何故かしら。気付いたら私は泣きながら手を合わせて拝んでいたわ。  とくだ君は、私の気が済むまで泣かせてくれた。隣で水戸黄門のテーマソングを口笛で吹きながら。よほど上手に吹けたのか、盛り上がりすぎて後半はハミングに変わっていた。  けれど調子に乗って転調したのがダメだったわ。自分の音域の限界を無視して、とくだ君は呼吸困難になっていた。  そんな彼を、私は……声を押し殺して笑った。 「肩が震えてるぞ。寒いのか? 仕方ねえな……ほら。これ、貸してやるよ」 「寒くないわ。もし寒いとしても、脱ぎたての靴下なんて絶対履かない」 「気が強い女だな」 「気が弱くても絶対履かない」  脱いだばかりの靴下を肩にかけ、彼はそこら辺に落ちていた草を口に咥えて、朝日を見つめた。 「ほら、太陽がやっと顔を出した。昨日は真っ赤な顔をして沈んだアン畜生も、1日たてば生まれたての白い顔で出てくるんだ。あんたも何で悩んでるのか知らねえが……元気だせよ」  生まれたての太陽、か。太陽なんて、毎日変わらないで同じものだわ。だけど、とくだ君の表現は嫌いじゃない。  潮風が頬に残る涙を乾かしてくれる。キラキラひかる海まで、私に“元気だして”って言ってくれている気がした。 「とくだ君、ありがとね。あとその草、ペッてした方がいいわ。唇が腫れ始めてる」
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