5人が本棚に入れています
本棚に追加
私の言葉に、とくだ君は辛子明太子のような唇で笑った。
なんだ。笑顔は可愛いじゃない。
思い切って、新しい恋をしてみてもいいかも。
「私ね、好きな人に裏切られちゃったの。彼、結婚してたんだって。今日ホントは、彼との記念日で、海で一緒に泳ごうと思ってたんだ。……だけど、もう彼とは泳げないの。私の恋はもう、凪いでしまったの」
海が、私のちっぽけな告白も全て受け止めてくれる。
さようなら……海の泡に消えてしまった、私の恋心。
「ねえとくだ君。新しい恋はどうすればすぐに見つかるのかしら」
「簡単だ。いい男に恋すりゃいいのさ。君の目の前に、俺が居るだろ?」
とくだ君のどうでもいい言葉を受け流し、私は海を見つめた。
いい男、か。どこにいるのかしら。水平線から来る大漁旗のイカ釣り漁船のように、私の所まできてくれたらいいのに。
最初のコメントを投稿しよう!