「メモリー」

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「そろそろか」  壁に掛けられている時計を見て、ボクは読んでいた文庫を閉じた。  もう部活動をしていない生徒は帰宅した後だ。  誰ひとりいない教室は、喧噪を忘れたように静まりかえっていた。 (先輩、まだいるかな……)  鞄に文庫を押し込み、そそくさと廊下へ向う。  この時間、美術室を訪れるのがボクの日課になっている。  きっかけはとても単純だった。                     *
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