母はアルバム星人

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 わたしの懸命な意見を右から左に流し、母はパソコンを操作している。プリンタがガコガコ揺れ、次々と写真を吐きだす。出てきた写真を手にとり、母が満足そうにうなずく。そして本棚を埋め尽くすアルバムの中から一冊抜きとった。もちろん写真をおさめるためだ。  開かれたページには、わたしの写真がずらりと並んでいる。母はそれを愛おしそうに見つめる一方で、目の前の本人には冷めた視線を向けてくる。 「なに?」  ふて腐れ気味のわたしに母は、いやね、と前置きをして言葉をつづけた。 「あんたが死んじゃって浮遊霊になってから半年たつけど、いつ成仏するんだろうと思って」 「さあ。お母さんがアルバム作りをやめないかぎり、たぶん無理なんじゃない?」  ま、わたし自身まだこの世に未練があるからかもしれないけど。 「だったら無理ね。アルバム作りは、わたしの生きがいだもの。それに幽霊の娘をアルバムにおさめるなんて貴重な体験だからね」  詫びる素振りは微塵もない。おまけにわたしの表情が気に入ったのか、目にもとまらぬスピードでカメラのシャッターを切る始末だ。
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