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リョウはしばらく、呆然と突っ立っていた。
我に返ると、あたまを振って、気持ちを落ち着かせようとした。
とりあえず、朝刊を持って行かなくてはならない。
郵便受けは、鳥居の根元に鎮座しているキツネの像の隣にあった。磁気結界の外である。リョウは少しためらったあと、結界の外に踏み出した。
ぴりっと電流が流れたような、弱いけれど確かに何かの負荷がかかった感覚があった。
郵便受けに入っていた新聞をとって振り返ると、さっきの生々しいスライディングの痕が、いやでも目に入ってくる。そのわきには、投げ捨てられた学生鞄がころがっている。
リョウはとてつもなく重い気持ちでその鞄を拾い上げた。中身が何も入っていないのだろう、軽々としていた。
その時だった。
バシッ!
昨夜と同じく、全身をわしづかみにされたような感覚があった。
(何だ……?)
しかし、拘束された時間は昨夜より短く、ほんの一瞬だった。
あたりを見回したが、怪しいものは見当たらない。
疑念を抱きつつ、石段を上った。
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