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女の子の顔から表情が消え、目の下がピクピクと痙攣した。
リョウは、たまらなく暗く、悲しい気持ちになった。
「ぼくを、手下にしたいの?」
女の子の両目が、きゅうっと吊り上がった。
「やめたほうがいいよ。ここには、とても強い〈狗番〉がいる。きっと、痛い目にあうよ」
リョウはしずかに、さとすように言った。あたまの中には、昨夜のマキのおそろしい姿が蘇っていた。
今や女の子は、ものすごい形相になっていた。鼻のあたまにしわが寄り、唇の端がめくれて歯がむき出している。
「毎日毎日……」
女子高生に化けた〈狗〉は、ギリギリと歯をくいしばった。
「くっだらねえことでパシらされて……何が〈導き手〉だか……好きこのんでテメエに導かれたんじゃねえってのに……あたしだって、誰かの〈導き手〉になれば……こんな生活……」
ふつふつとたぎる怒りが、血走った目に充満した。
「畜生!」
絶叫すると、鞄を投げ捨てて突進した。
「ぎゃん!」
異様な声を発して、〈狗〉は、鳥居の真下で見えない壁に跳ね返された。
吹っ飛ばされて、受け身もとれずに凍った地面にスライディングする。
手をついて上げた泥まみれの顔から、鼻血が流れ出た。
〈狗〉は、火のような視線をリョウに投げつけると、一目散に逃げて行った。
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