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服部からの扱いに嫌気が差したため俺は村正村に戻ることにした。
しかし、そこは俺の知っている村ではなかった。
火炙りの刑が行われたらしい。
死んだのは蔵馬伝兵衛ってゆー放火犯だった。 70人の部下を従えて江戸の街を火の海にした。
享保5年、1720年に俺は来ていた。
放火犯は火炙り、親殺し・主殺し・関所破り・国事犯は磔刑される。磔刑の場所は鈴ヶ森か小塚っ原だった。
「蔵馬の野郎、村正村の出身だったそうだぜ?」
ドイツ人のパイロット、アウストリが言った。
アウストリはドイツ語で東を意味した。
「頭がキレるらしく犯行にはローソクを用いていたそうだ」
「ナルホド、時間稼ぎってわけかい?」
徳川吉宗による享保の改革がはじまったのは1716年頃だ。大岡忠相と組んで小石川養成所を麹町(新宿区)に作ったり、賭博や出版などを統制した。この時代にはエロ本や恋愛小説、医療本の新書、さらに徳川家に関する本を出版するのが禁止されている。
「少し前にも『吉宗の野望』って本を書いた小説家が……」
「殺されたのか?」
話を遮られてアウストリは唇を尖らせた。
「イヤ、殺されはしないよ?しかし、監禁され罰金刑にあった」
「信長や武田信玄だったらいーのか?」
「徳川を描かなければ大丈夫だろう」
秀吉のあとに誰を存続させるかなぁ?胸がワクワクするなぁ?プレイボーイとかFRIDAYとか読めないのか?欲求が溜まりそうだな?
「アウストリは何で伊賀国を襲おうとしてたの?」
「信長に仕えれば安泰だと思ってたんだ」
「え?第2次世界大戦の時代からタイムスリップしたってこと?」
「うん」
俺たちは小石川養成所で働くことになった。
「申し訳ないが伊勢に向かってくれないか?」
赤髭ドクターに言われた。
伊勢正三、かぐや姫、22歳の別れ
「伊勢ってどこですか?」
アウストリがため息をついた。
「三重県に決まってるでしょ?が?」
「随分偉そうなのねぇ?助けてやったのに」
「何でオネェ言葉なの?トオルってどことなくマツコ・デラックスに似てるね?」
「あんなのと一緒にしないでよ!」
オホン!赤髭ドクターが咳払いした。
紀伊や伊勢はこの時代、外国船が多く行き来していた。伊勢松坂屋は死の商人でもあったのだ。
辻斬りにあった町人の体を舐めて報酬を手に入れた。「出張前なのに悪いなぁ?」
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