久方ぶりの家族

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「こんなことになって……すまない」  男性が晋平に向かって勢いよく頭を下げた。律儀に両手は肩から真っ直ぐ降りており、指先までピンと張っている。 「そんな! どうか頭を上げてください」  晋平は男性の謝罪に焦って声が大きくなった。  “今度、お父さんとお母さんと揃って出掛けることになったんだ!“  つい先日、結香から晋平が聞かされた言葉だ。高校を卒業して5年。社会に出た晋平と結香は恋人へと発展していた。結香の長きにわたる説得の据え結香の両親は一度だけ、結香も交えて一緒に旅行に出掛けることになっていた。久しぶりの家族水入らず。結香が夢にまで見た光景。邪魔をしたのは信号無視をした車だった。  晋平の元に連絡があったのは事故から2日後。結香の母親からだった。  横板に雨垂れ。結香の母親は言葉を選ぶように、噛みしめるように、感情を押し殺すように、ポツリポツリと結香が事故に遭ったこと、一命は取り留めたが意識が戻らないこと、搬送先の病院の名前等を晋平に伝えた。  晋平は結香の見舞いを済ませ、やり切れない想いを滲ませながらも、ふとスマートフォンを手に取るとメールの着信があったことを知らせていた。高校の時の友人からだった。同窓会を開くから来ないかという誘いだった。
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