4 師弟

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 こんなところに誘い出してどうするつもりなのか、前を行く背中に、夏樹はただ視線を向けていた。 「今日のことは驚いただろう」  歩きながら、莉櫻が声を投げてくる。日に当たれば金にさえ見える彼の茶色の髪は、いまは外灯の下で暗くにごった色に見えた。 「あそこまで花が咲いたら、もう助からない。医務室の中ならともかく、外でそうなったらもう、助けを呼んでも間に合わないんだ。それに教えただろう。印から黒い光が零れたら、それはもう鬼になる前兆だ」  噛んで砕くようにいわれて、夏樹は視線を落とした。 「ああなった鬼憑きは、鬼と見なして退治する」  ひゅっと、夏樹は息を呑んだ。それにかまわず莉櫻はつづける。 「悠長に看取ってる間に鬼になられて、取り逃がしたら元も子もない」 「そんないいかたないだろう!」  虫の声や、水田からの蛙の声を押しのけて、夏樹の怒号はやけに響いた。莉櫻についていく足を止める。 「仲間だったんだぞ。看取るくらい当たり前だろう!」  莉櫻は夏樹を振り返った。 「看取って、そのあとは? なにもしなければ鬼になるだけだぞ」 「なってから退治すればいい」
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