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「悔しいなぁ、お店にも引けを取らない自信作のつもりだったのに。なんでわかっちゃうかな」
確かに、愛利の自信作とやらは、出来栄えだけなら洋菓子店のタルトと遜色がない。売り物だといって疑う人もいないだろう。だが、惜しいのだ。
「だって使ってるの、フルーツミックスの缶づめだろ。同じのが家にもある。その缶の中身が、そのまま載ってるからな」
愛利はハッと息を呑んだ。夏樹はかまわずつづける。
「売り物と錯覚させたいなら、缶づめの中身をそのまま使うんじゃなく、せめてアレンジを加えないと……いったっ……」
先程勢いで肩を組んだ仕返しか、今度は秋時が夏樹の首に腕を回して絞めた。まるで余計なことをいうなと抗議しているようだった。
「ごめんな金子……じゃなくて愛利。こいつ無駄に鋭いくせにたまにデリカシーなくて。けど悪気はないいい子なんだぜ!」
「おい、放せっ」
暴れると、秋時は力をゆるめてこっそりと夏樹に耳打ちした。
「馬鹿夏樹。その無駄な推理力で女の子に喧嘩売ってんじゃねえよ」
「は? そんなつもりは……」
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