4 師弟

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 莉櫻の声がした。人を殺めたあとだというのに、普段とまるで変わらない声が。 「なんの用だよ」  押し殺したような声で問いかけると、莉櫻は自嘲気味にいった。 《明日から一週間謹慎だからな。いまのうちに会って教えたいことがある》  人を殺して謹慎ですむ組織が、いまさらながら信じられないと思った。夏樹はなにもいえなくなって無言になったが、莉櫻はその沈黙をどう受け取ったのだろう。  コンコン、と、玄関のドアが鳴いた。 「出てこいよ。夏樹」  受話器とドアの向こう両方から、莉櫻の声がした。  人気のない夜道を、それでも外灯が健気に照らしている。  夏樹が住んでいる地区は町外れもいいところで、少し歩いただけで田畑に囲まれた寂しい場所に行きつく。  こんな時間に農作業をする人間がいるはずもなく、辺りにはまるで人気がなかった。  いまは止んでいたが、さっきまでの雨で道路は色を変え、まるで墨でもぶちまけられたように黒光りしている。
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