4 師弟

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 その夏樹を見て、莉櫻はいった。 「おまえは甘すぎる。本当はやりたくなかったけど仕方ない」  なにをされるのだろうと、夏樹は身構えた。莉櫻は唇だけで笑った。 「いまから俺がすることは、昔夏乃がやったことだ。いいか、よく見てろ」  いうなり、莉櫻は右手で持ったナイフを、自分の左手首に押し当てた。そして、一気にその肌をかっ捌く。  外灯の光に飛び散る赤が照らされて、黒い地面へと落ちて跳ねた。 「なっ――なにやってんだ!」  突然のリストカットに、夏樹は自分の命が脅かされるのとは違う恐怖を覚えた。  莉櫻はナイフを一閃して血を払い、腰の鞘に納める。 「いてぇ……」  当たり前のことをうめいてしゃがむ彼に、夏樹は駆け寄った。 「いきなりなにしてんだよ!」  斬ったばかりの左手首を押さえている莉櫻の右手に、夏樹は自分の手を載せて圧迫した。本当はなにか止血できる布があればいいが、あいにくいまはハンカチすらない。  ぽたぽたと、地面に血が落ちる。
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