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「いでっ」
少々強引に巻き込んだせいで秋時の口から悲鳴が漏れたが、夏樹は聞かないふりをした。
「よかったな愛利。マジで」
「うんっ」
「夏樹いてぇってば。ってかなに、なんの話?」
要領を得ない秋時を置いてきぼりに、夏樹と愛利は笑みを交わした。それから、愛利はテーブルを指す。
「すごくいいことがあったの。秋時くん、一緒に祝って」
のけ者にすることなくちゃんと話に巻き込んで、愛利は微笑む。彼女の手が指した先には、切り分けられたフルーツタルトが三つ、フォークと一緒に皿の上に載っていた。その近くには、おそらくタルトをホールで入れてきただろう白い箱もあった。
「うまそう」
素の声を漏らす秋時の横で、夏樹も思わずうなずいた。タルト生地の上で、フルーツが宝石のように輝いている。みかん、パイナップル、桃、さくらんぼーーあれ?
夏樹は首をかしげた。
「愛利。これもしかして、おまえの手作りか」
その問いかけに、秋時が「マジで?」と愛利を見る。愛利は目を丸くした。
「すごい夏樹くん、なんでわかったの?」
肯定を示す言葉に、夏樹はわかるよと苦笑した。愛利は頬をふくらませる。
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