第1章

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 そう挨拶した一沙は、とても細く色白で不健康そうに見えた。けれど、手入れの行き届いたツヤのある髪と、アイロンのしっかりとかけられた制服の白シャツからは、清潔感が漂い育ちの良さが感じられた。一沙は、教室を一通り見渡すと窓際の最前列に目を留めた。そして窓から差し込む日差しのように目を輝かせて言ったのだ。 「都築くんっ! よかった同じクラスで」  そう言って控え目に胸元で手を振った。   教室がざわついたのも無理はない。透明感のある美少女と冴えない都築が知り合いだとは、誰も想像していなかったのだ。ただ小南一人を除いて。 「知り合いなの?」  休み時間となった教室内では、一沙が質問攻めにあっていた。都築との関係について聞きだそうと躍起になって群がる輩に、ゆりは若干の吐き気をもよおしていた。何がそんなに気にかかるのか、嫌悪感を明らさまに表した。 「顔、顔っ」  笑ってまりもが囁いた。 「せっかくの端正な顔立ちが台無しよ、ゆり。まぁ、黙ってればだけれど」 「一言、余計なのよ」  はははとまりもは軽快に笑った。 「何が、そんなに気になるのかな」 「だから言ったじゃん。都築は意外と女子にモテる。まぁ、ゆりみたいに武道をする人から見れば頼りなさそうに見えるだろうけれどね」 「ギラギラしてる。女子の目が。闘志を感じるわ」 「仲が良いふりして牽制し合う所が、女子の怖いところよ。ねぇ」 「そうやって分析してるまりもも、怖いわあ」  ゆりとまりもは日差しの中で身を震わせた。  成績が優秀でもなく、とりわけ運動が得意なわけでもない。なのに何故、都築はモテるのか。ゆりは机に肘をつき都築の背中を眺めていた。都築の席は窓際最前列、そしてゆりの席は窓際最後尾。 視界に映る線の細い背中。日に輝く白いシャツは、風で揺れるカーテンに時折遮られた。寄せては引く波のように薄手のカーテンが揺れる。一瞬だけ、その動きが止まった。その時、丸メガネ越しの視線と目が合った。  それはあまりにも突然で、気のせいかもしれないと思わせるほどに一瞬だった。都築は咄嗟に視線を外したのだった。思っていたよりも童顔な横顔が俯きはにかんでいる。そして再び、ゆりと視線を合わせるとゆっくりと背中を向けた。後ろ髪の隙間から見える耳が赤かった。  うう......むむ。  これは一体、どういうことだろう。ゆりは机の上に顔を突っ伏し唸った。
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