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その刺さるような言葉は窓際最前列で小さく肩を落とす都築へと向けられた。
「......作れる......から」
「ん?」
「僕、洋服作れます」
消え入りそうな声に、まりもの声が重なった。
「えーっ! なんだ、都築って、やっぱ作れるんだ?」
都築は一瞬体を強張らせて小さく頷いた。
「じゃあ、洋服をネットで売ってるっていう噂は本当なんだ?」
まりもの目が輝いていた。まりもはクラスの中でも、少しばかり垢抜けた雰囲気を持っていて、日頃からメイクやネイルなど女子力アップには余念がない。それゆえに、今回の催事には、かなり乗り気だった。
「だとしたら、転校生の村沢さんと知り合いというのも頷ける」
「なんで?」
ゆりはホワイトボードを消しながら、まりもに訊ねた。
「どこかで見たことがあると思ってたの。村沢さんって読モやってるんでしょう?」
「読モ? 読モって?」
ゆりにとっては、まるで未知の言葉を聞いているようだった。まりもと都築の顔を忙しそうに視線を行き来させていた。
読モというのは読者モデルのことで、村沢一沙は時々モデルとして雑誌に出ているのだと、まりもはいう。その時、着用の洋服はいつも決まったブランドで、とてもフェミニンで時にガーリーな洋服らしいのだ。あまりの可愛らしさに、まりも自身もチェックしていたのだという。「一沙がね、その洋服はインディーズブランドでネット販売で購入してるって答えてた。気になって調べてみたけれど、デザイナーは胡蝶という女性だったの。もしかしてだけど、知ってる?」
夕日が教室を染めていた。長く伸びた影が時折揺らめいて見えていた。そしてしばしの沈黙の後、都築は静かに話し始めた。
「このイベントに参加することで、わかってしまうことだと思うから言うけれど、一沙の着ている服は実は僕が作っているものです。一応、女性向けなので胡蝶という名を使ってますけど」
「そうなんだっ。じゃあ、プロが居るんだから、このイベント成功間違いなしだよね」
はしゃぐまりもに「でも......」と、言葉を返したのはゆりだった。
「これで確実に、小南は都築に執着すると思う。なんで引き受けたの?」
心配そうにゆりは視線を都築へと向けた。
「それは......藤堂さんがモデルに指名されたから」
夕日に染まる都築の横顔が、そのまま景色に溶け込んでしまいそうに思えていた。
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