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スマートフォンの通知音が鳴る。
途端に嫁は身を縮め、身体を強張らせる。
意を決して僕はスマートフォンに目をやる。
母親からのメールだ。
「界獣、出てるよ」
メールにはそれだけが書かれていた。
「どうしたの?」嫁が聞いた。
「なんでもない」と僕は答える。
慌てた様子で嫁はテレビの電源を入れる。
止めようとするが間に合わない。
テレビモニタに、界獣が街を蹂躙する様子が映し出される。
それは文字通りの「蹂躙」だった。
「蹂躙」としか言いようのない情け容赦のなさで、界獣は市街地を破壊した。
年端もいかない子供を殺し、妊婦を殺した。
若者を殺し、老人を殺した。
身分も年齢も一切関係なく、界獣は分け隔てなく殺戮を繰り返した。
「......いかなきゃ」嫁が言う。
僕は沈黙したまま、焦げたトーストを齧った。
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