#01

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スマートフォンの通知音が鳴る。 途端に嫁は身を縮め、身体を強張らせる。 意を決して僕はスマートフォンに目をやる。 母親からのメールだ。 「界獣、出てるよ」 メールにはそれだけが書かれていた。 「どうしたの?」嫁が聞いた。 「なんでもない」と僕は答える。 慌てた様子で嫁はテレビの電源を入れる。 止めようとするが間に合わない。 テレビモニタに、界獣が街を蹂躙する様子が映し出される。 それは文字通りの「蹂躙」だった。 「蹂躙」としか言いようのない情け容赦のなさで、界獣は市街地を破壊した。 年端もいかない子供を殺し、妊婦を殺した。 若者を殺し、老人を殺した。 身分も年齢も一切関係なく、界獣は分け隔てなく殺戮を繰り返した。 「......いかなきゃ」嫁が言う。 僕は沈黙したまま、焦げたトーストを齧った。
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