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そんなある日。
「うう...こ、怖いよう」
夜の暗がりの中、懐中電灯一本を持って、私はお屋敷をさまよっていた。
通常15時上がりの私が、何故、今日に限って夜の9時にもなって職場に居るのかというと……
ええ、昼間にやらかしたからです、はい。
例の眠たそうな顔をしたチンチラ、『カズヒサくん』。
再三にわたる脱走で我々メイドを悩ませている憎いアイツを、今日の餌やり当番だった私が取り逃がしてしまった。
いつもであれば、定時になればアサダさんが「捜索打ち切り!」宣言を出してくれるのだが、折悪しくも明日は、獣医さんの検診日。
結局見つからず、皆が困った顔を見合わせる中、
良い人でいたい私は、自ら、
「私のせいなんで、残って見つけまーす!」
などと手を挙げてしまったという運びだ。
そして今に至るわけなんだが…
「クッソぉぉ」
カズヒサときたら、よりにもよって、何でこんな遠くまで逃げるんだ?
え、待って。
もしかして、よく考えたらここ、例のお化け屋敷の近くじゃない?
実はこれまでに、私は何度も奴を目撃していた。
奴ときたら、私が諦めかけると姿を現し、追いかけるとまた姿を消す。まるでそういう遊びを楽しんでいるかのように。
それを繰り返しながら、いつの間にか、こんな外れまできてしまっていたようだ。
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