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「何だってあんな辺ぴな場所に、おんぼろ小屋なんかがあるんですかねー。さっさと取り壊しちゃえばいいのに」
やっと見つけた『 カズヒサくん』(チンチラ♂1歳。しつけが悪いため、噛む!)を抱え、ふうふう言いながら私が愚痴ると、アサダさんは徐ろに立ち上がり、急に、部屋の電気をパチンと消した。
「...それはね、あそこを壊せば。
.....................。
“たたり”があるからだよおぉぉぉお〜」
「っキャーーーー!!!」
スマホのライトを顎に当て、闇の中に浮かび上がったアサダさんは、稲川〇二ばりに恐ろしい。
後ろ向きに倒れた私は、尻モチをついてしまった。
脇からすり抜けて脱走を計るカズヒサくんを、すんでのところで抱きとめる。
話によると、何でもそこは昔、使用人、主に女中の、“折檻部屋“だったらしい。
使用人同士の恋愛関係や、粗相をした女中、食材をくすねた丁稚などが、そこに入れられ、布団に素巻きにされて天井から吊るされ、主人に懲罰棒でバシバシ打たれていたのだとか。
ある時、折檻に耐えられなくなった女中が途中で逃げ出し、追い詰められた先の古井戸に身を投じた。
以来、井戸の底からは獣の唸り声のような音が、誰も居ないハズのおんぼろ小屋から、時折ガタガタいう音や人の気配が、玄関口には時折、水が流れる音がきこえてくるという…
「ヒィィィィ」
すっかり肝を冷やした私に、アサダさんはにんまり笑った。
「まあ、あそこはずっと開かずの間になってるし?近寄らなければいいわけだからね、ヲホホホホ」
「う、まあそうですよね、ヲホホホホ」
(しかし、いつ仕事してるんだろうな、アサダさん)
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