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記者とかやめて。
何話せっていうの?
『今のお気持ちを…』
『橋本さんにとって野沢監督とは?』
『最高のコンビと言われてましたが、パートナーをなくして…』
うるさい。
うるさい。
「…すみません……受けとめられません……」
それしか言えない。
受けとめらんない。
私は病院で冷たくなった監督から離れなかった。
ずっと離れなかった。冷たくなった監督の側にいた。
焼き場に着いた時、発狂しそうだった。
みんな、棺を運ぶ人が敵に見えた。
やめて!監督が居なくなる!監督に触んないで!焼かないで!
あまりの私の取り乱し方に周りの人が私を押さえた。
お願いだから、私から監督を連れて行かないで!
一睡もできなくて、物も食べれなくて、だけど涙だけは流れ続けて、生きている証明みたいで、それがもう嫌だ。
私はまだ泣く。監督は泣いてもくれない。
嫌だ。嫌だ。
私から監督を奪わないで。
仕事なんかできる状態じゃなかった。
マンションに戻って、私は幽霊でもお化けでもいいから、監督が戻って来てくれるの待ってた。
来たのは冬哉さんだった。
だけど、冬哉さんに私と監督の繋がりはわかんない。
何言っていいのかわからなくて、冬哉さんに乱舞の台本見せた。
冬哉さんは何も言わないで、ずっと私を抱き締めてくれてた。
言わないでくれるのが救いだった。
ただ泣いて、泣いて、冬哉さんにしがみついて泣いていた。
寝ても、すぐに起きてしまう。
食べようとすると気持ち悪い。
多分、追悼に合わせて、四十九日か知らないけど、テレビで野沢監督の特番が組まれて、『乱舞』がテレビ放送された。
違う目線で見てた。
野沢監督に私はどう見えていたんだろう?
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