15話 監督

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記者とかやめて。 何話せっていうの? 『今のお気持ちを…』 『橋本さんにとって野沢監督とは?』 『最高のコンビと言われてましたが、パートナーをなくして…』 うるさい。 うるさい。 「…すみません……受けとめられません……」 それしか言えない。 受けとめらんない。 私は病院で冷たくなった監督から離れなかった。 ずっと離れなかった。冷たくなった監督の側にいた。 焼き場に着いた時、発狂しそうだった。 みんな、棺を運ぶ人が敵に見えた。 やめて!監督が居なくなる!監督に触んないで!焼かないで! あまりの私の取り乱し方に周りの人が私を押さえた。 お願いだから、私から監督を連れて行かないで! 一睡もできなくて、物も食べれなくて、だけど涙だけは流れ続けて、生きている証明みたいで、それがもう嫌だ。 私はまだ泣く。監督は泣いてもくれない。 嫌だ。嫌だ。 私から監督を奪わないで。 仕事なんかできる状態じゃなかった。 マンションに戻って、私は幽霊でもお化けでもいいから、監督が戻って来てくれるの待ってた。 来たのは冬哉さんだった。 だけど、冬哉さんに私と監督の繋がりはわかんない。 何言っていいのかわからなくて、冬哉さんに乱舞の台本見せた。 冬哉さんは何も言わないで、ずっと私を抱き締めてくれてた。 言わないでくれるのが救いだった。 ただ泣いて、泣いて、冬哉さんにしがみついて泣いていた。 寝ても、すぐに起きてしまう。 食べようとすると気持ち悪い。 多分、追悼に合わせて、四十九日か知らないけど、テレビで野沢監督の特番が組まれて、『乱舞』がテレビ放送された。 違う目線で見てた。 野沢監督に私はどう見えていたんだろう?
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