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私は私を初めて『綺麗』だと思った。
セックスにすがり、恋にすがり、いつ死ぬかわかんないような私は、儚げで綺麗に舞っているようだと思った。
野沢監督の気持ちが理解できた気持ちがした。
あまりにも大きな気持ちで包んで見てくれてた事がわかった。
やっと本当の野沢監督に触れた気がした。
やっと泣いてばかりじゃだめだと思った。
冬哉さんの腕の中で『乱舞』見ながら
「……私、綺麗だね」
と言った。
冬哉さんは
「……俺は演劇あまりわからんけど、…これだけはわかる。お前のこれから先が『幸せであるように』って……なってんの。…なんて言うのか?…最後になるにつれて、お前の顔のアップが少しづつ微笑みから笑い顔になって、これから先は『笑っていて欲しい』みたいな…上手く言えないけど……」
うん。……本当にそう撮ってるよ。
これが監督の私への思いだったんだね。
演技に必死で気づかなかった。
監督、ありがとう。
私は何か吹っ切れた。私が『女優』になれたのも、演技を心から入れたのも野沢監督のおかげ。
だから、幸せになるね。
もう、女優としての幸せは監督がいっぱいくれた。
充分過ぎるくらい、くれた。貰った。
私が言う前に冬哉さんが言った。
「美月、……監督みたいに成功もしてないし、大人じゃないし、未熟者そのものだけど、……結婚しよう。……ずっと一生好きでいる自信だけはあるから、一緒に幸せになろう」
私の胸元に手を突っ込んで、ネックレスの指輪出して、キスした。
「……幸せになろうね。私も一生好きでいるよ……冬哉さんと幸せになりたい。」
私も指輪にキスした。
監督、乱舞、完成したから。ありがとう。……さようなら。
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