15話 監督

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私は私を初めて『綺麗』だと思った。 セックスにすがり、恋にすがり、いつ死ぬかわかんないような私は、儚げで綺麗に舞っているようだと思った。 野沢監督の気持ちが理解できた気持ちがした。 あまりにも大きな気持ちで包んで見てくれてた事がわかった。 やっと本当の野沢監督に触れた気がした。 やっと泣いてばかりじゃだめだと思った。 冬哉さんの腕の中で『乱舞』見ながら 「……私、綺麗だね」 と言った。 冬哉さんは 「……俺は演劇あまりわからんけど、…これだけはわかる。お前のこれから先が『幸せであるように』って……なってんの。…なんて言うのか?…最後になるにつれて、お前の顔のアップが少しづつ微笑みから笑い顔になって、これから先は『笑っていて欲しい』みたいな…上手く言えないけど……」 うん。……本当にそう撮ってるよ。 これが監督の私への思いだったんだね。 演技に必死で気づかなかった。 監督、ありがとう。 私は何か吹っ切れた。私が『女優』になれたのも、演技を心から入れたのも野沢監督のおかげ。 だから、幸せになるね。 もう、女優としての幸せは監督がいっぱいくれた。 充分過ぎるくらい、くれた。貰った。 私が言う前に冬哉さんが言った。 「美月、……監督みたいに成功もしてないし、大人じゃないし、未熟者そのものだけど、……結婚しよう。……ずっと一生好きでいる自信だけはあるから、一緒に幸せになろう」 私の胸元に手を突っ込んで、ネックレスの指輪出して、キスした。 「……幸せになろうね。私も一生好きでいるよ……冬哉さんと幸せになりたい。」 私も指輪にキスした。 監督、乱舞、完成したから。ありがとう。……さようなら。
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