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執務室を出て5分程。
時折すれ違う人にぎょっとされながらも、恙無く目的地へと到着した。
「ヴィスカルディはいるか?」
警備の扉を開きながらそう問いかける。
脇に抱えた男は依然として意識を失っている。
「奥にいらっしゃいます!」
入口近くにいた青年が敬礼しながらそう言った。
「そうか、この男を任せてもいいか?」
「はい!」
青年が尋問室に男を運んでくのを見送って、奥への扉を開いた。
「おい、せめてノックしろ」
「お前には必要ないだろ」
コーヒー片手に振り返ったのは長い黒髪の女。ではなく男。
声も、身形も、女であるのは新月の前後3日間だけ。
世界で1%にも満たないツィリングと呼ばれる"人種"であり。ユーフィリア国警備部の最高士官長。ゲラート・ヴィスカルディ本人である。
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