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こくこくと頷いた駈がさっそく母親の部屋へと向かう。
「おまえらはホントに怖いもの知らずだなあ」
なんだかんだ言いつつ和樹もついてきて三人は母親の部屋に入った。家具といえばベッドと小さな机だけ。他には何もない。
机の足元の収納ボックスを覗いてみる。書籍類や文房具が無造作に放り込まれている。書籍の背表紙を見ていた駈が小さく声をあげた。
「卒業アルバム」
和樹も気がついて手をかける。一瞬怯んだ後、箱入りの大型本を取り上げた。高校の卒業アルバムだ。
「うわあ。初めて見た」
「僕も」
「ボクも」
「お母さんのだよね?」
「そりゃあ多分」
和樹は丁寧に箱から重たい綴じ本を出して机の上に広げる。集合写真や行事のスナップ写真が続いた後にクラス別の個人写真が載っていた。
「うわあ、お母さん探して。早く、早く」
「急かすなって」
「えーと、これ氏名順みたいだから……」
ほどなく駈が見つけた。
「いた。お母さん」
兄弟たちは顔を寄せて覗き込む。
「あんまり変わらないね」
「うん」
「でも髪が短い。かわいい」
目を輝かせて花梨はささやく。お母さんはやっぱり綺麗で可愛い。
「ねえねえ、今日子ちゃんや和美ちゃんは?」
「ていうか、和樹のお父さんは?」
「それは見たいような見たくないような」
ページをめくろうとして気がついた。2L判の大きな写真が一枚滑り出してくる。
「わ、女の子の写真だよ! もしかしてお母さん?」
写っているのは駈よりも小さな女の子だ。ピンク色のふわふわのドレスに、肩まで伸びた髪にはリボンの付いたカチューシャをしている。
「……お母さんじゃないだろう」
首を傾げる和樹の横から、駈が花梨の顔と並べて写真をかざす。
「似てる」
「え?」
写真の女の子が花梨と似ていると言うが本人にはよくわからない。
「もういいだろう。片づけて出よう」
「そんなにお父さんにバレるのが怖い?」
「あたりまえだ」
花梨は首を竦めて大人しく従う。リビングに戻って三人でおやつを食べた。
「今日ねえ、お母さんの高校のアルバム見ちゃった」
「へえ?」
「ナイショだよ」
「はいはい」
「お父さんのはうちにある?」
「持ってきてたかなあ。覚えてないよ」
「捜してよ」
「そのうちな」
ニュースを見ながら上の空で答える父に花梨は少しムッとする。だが思い出したことに機嫌を直して問いかけてみる。
「アルバムの間に知らない女の子の写真が挟まってて。誰だろう?」
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