deux―ドゥ―

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deux―ドゥ―

「それで? なんであんたがここにいんの?」 ストーカー男のプロポーズ大作戦?! という一大事が繰り広げられた翌日の朝一番の私の第一声は、苛立ちと呆れの混ざった非常に不機嫌そうなものだった。 そうでなくても昨日で夏休みがおわり、今日から学校だというだけで憂鬱なのに……。 「ユリコ特性のプティ・デジュネ(朝食)をいただいているところにきまっているだろう?」 「見ればわかるわっ! そうじゃなくてどうして家族でもないアンタが人様の家でのんびり朝ごはんを食べているのか、理由をきいてんの!!  しかもなにげに呼び捨てだし!」 「だって『マダム』なんて呼ばれたらなんかくすぐったいじゃない~。だからユリコってよんでってお母さんからおねがいしたのよ。  あら、もう忘れちゃったの? 今日から琉くんも同じ学校だから案内してあげてっていったでしょ。それで、どうせ家にくるなら朝ごはんも一緒にたべましょうって……昨日話したでしょ?」 ほうれん草の胡麻和えに卵焼き、焼き鮭にわかめの味噌汁と白米という、これぞ日本家庭の朝食の定番☆という今日のメニューを、流れるような美しく繊細な箸使いで食べる日本人離れした顔立ちの制服姿の男とエプロン姿の母の「日本食でよかったかしら?」「フランスでもたまに食べていたので。特に重要な会議の日やプレゼンのある日なんかは味噌汁を飲まないと力が出ないといって必ず和食を」「フフフ。ケイちゃんも善次郎さんに似てきたわね~」というのほほんとした会話を尻目に昨夜のリビングでの会話を思い出す―――― ・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・ 「お父さん、お母さん、美紗子さんは僕の運命の人です。人生の最後をむかえるその刻まで、いえ、最後のその刻ですら『結婚してよかった』と言えるよう、絶対に幸せにしますのでどうか僕たちの結婚をみとめてください」  花束の一時保管という仕事を終えた私がリビングに足を踏み入れた瞬間に見たものは、勘違い男による第二回プロポーズ大作戦だった。
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