un―アン―

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 いかにも久しぶりに会いましたというようなのほほんとした近況報告の会話がズルズルと繰り広げられそうになるのを大声を上げて制した私が、混乱した頭で母に状況説明を求めると「もう、何いってるのかしら、このコったら」とでもいうような呆れた顔で言葉をつむいだ。 「お隣の善治郎さん、師範のとこの琉くんじゃない。会ったことあるでしょう? あらやだ、こんなところじゃアレね。恵一くんのお家と比べたら随分狭いところですけど、よかったら中に入ってお茶でもどうぞ。」 「いや知らないし! てかたった今ミサ姉にプロポーズしたストーカー男だよ?! 家にあげるとか何いってんの?!」 「失礼な! 僕はストーカーじゃない、美紗子さんの運命の人だ!  杉山、お邪魔させてもらうぞ。」 「はい、かしこまりました」  来客用のスリッパを二足並べてからスタスタとリビングに戻っていく、どこか浮かれた母の背中に非難の声をあげるも効果はないようで…。おまけに振られたというのにいまだに『運命の人』だと主張するストーカー男は、「勝手に入らないでよ?!」という私の制止もどこ吹く風で靴を脱いでスリッパを履くと颯爽とリビングへと入っていった。
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