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橘・・・大悟
テストの順位が発表されるとき、
いつも俺の下に書いてある名前だった。
その名前を発見したのと同時に、
いつも視線を感じていた。
「また睨んでるよ、橘のやつ」
「瀬戸くんのこと、ライバル視してるんじゃない」
いつも俺のことを見ていて、
逆に俺が見ると目をそらして去っていく。
橘大悟。
成績は良いけと人付き合いの良くない彼の評判は、
あまり良くなかった。
ただ橘のその視線は、
すごく心地よかった。
こう言うと偉そうに聞こえるかもしれないけど、
俺は要領が良いのか、なんでもそつなくこなすことができた。
問題が解けなくて悩んだこともなく、
運動ができなくて悩んだこともない。
楽譜だって読めば理解できたし、習字だって慣れればそれなりに上手く書けた。
特に手入れをしているわけでもないのに、肌は荒れないし、
何を飲んだわけでもないのに身長は伸びた。
・・・努力をしたことがなかった。
それは羨ましがられることなのかもしれない。
でも当事者からすると、そんなに魅力的なことでもなかった。
だって、何かをしたいとか何かが欲しいとか、
そういう欲求すらも沸かないんだから。
1位だって、なりたくてなったわけじゃない。
ただ普通にテストを受けたら1位になった。
それだけのことだ。
だから、1位になりたいと努力しているであろう橘のことが、
とても羨ましかった。
その情熱が、羨ましかった。
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