5.あの日

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「震えてる」     えっ? 「お前いつも、インターフォンが鳴る度震えるんだよ」 オレ……震えてた? 紫津木を見上げた。   「バカ!……そんな顔すんな」 更に強く抱きしめられる。 オレ…どんな顔したの? 「なぁ…」 抱きしめたまま、紫津木が話しかけてきた。 「震えてまで、なんでアイツらの相手すんの?」   あ……    「その……安堂とかいう奴のこと……好きなのか?」 「ち……違う!」   紫津木を見上げ、ブルーグレーの瞳を見つめた。   「じゃ……なんで?」 でも……言えない……言ったら…………たぶん…会ってくれなくなる……。   「……わかった」 冷たい響きに驚いて紫津木を見ると、オレから身体を離して、立ち上がった。   「紫津木……?」    目を合わせてくれない。   紫津木は黙ったまま、ボタンをしめ、カーディガンを羽織った。     「帰るわ……」   「紫津木?」   「立ち入った事訊いて、悪かったな」 と、切なそうに笑った。 え……    リュックを肩に掛け、リビングを出て行き、 そのまま、玄関を出て行てしまった……。
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