5.あの日

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嘘……出て行っちゃった……。 そういえばオレ……紫津木のケー番知らないんだ……。   ダメだ…追いかけなきゃ! でも…追いかけてどうする? 追いかけて、引き止めて……それから? あんな事話せる?   話したらどうなる? これからも傍にいたいのなら、いつか話さなきゃいけない。 それとも、もう、会わない…? ダメ……ダメだよ。 想像するだけで、胸がズキズキする。 まだ残ってるんだ。 抱きしめられた時の、紫津木の腕の感触、頬に触れた肌の暖かさ、匂い、声……。 会いたい……。 会いたいよ……紫津木! カチャ ぇ……? 「また泣いてたのか?」 紫津木が、リビングの扉を開けて、普通に入ってきた。 ぇ…… 「何で……?」 「それは……」 紫津木は、ばつの悪そうに髪をかきあげながらローテーブルまで来ると、宿題のノートや教科書をかき集めて、リュックに詰め込んだ。 ああ……忘れたのね。    オレは可笑しくなって、少し笑ってしまった。
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