5.あの日

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1年前……。 「はぁ……もぉ……ダメ…死ぬ…!」 オレは、大学の構内をジャージ姿で全力で走っていた。 ていうか、自宅から全力疾走だったから、もはや全力では無かったかな。 ほとんど歩きと変わらないスピードだったし……。 殺人的な暑さは無くなっていたけど、まだまだ涼しいとは言えない日々が続いて、この日だって既に汗だく…… これから、体育だっていうのに、始まる前にこんな汗かいてどうする? 他の大学は知らないけど、ここは一年だけ必須で体育がある。 基礎的な学習は、仕方ないとして体育は要らないだろ?と、思ってしまう。 ようやく、体育館に到着した。 はぁ……ホント…死ぬかと思った…。 あっ……ボックスは?   あっ! 「待って下さい!」 オレは、ギリギリのタイミングで出席用紙をボックスにねじ込んだ。 「今度からは、ちゃんと余裕を持って来てくださいね」と、ボックスを回収しに来た事務の人に小言を言われたけど。 「はぁ……」 オレは、体育館の隅に座って息を整えた。 珍しく寝坊しちゃって、着替えてる時間も無さそうだったから、家からジャージできた。 正解だったな。ホント、ギリだった。 Tシャツの裾で顔の汗を拭っていたら、不意に視線を感じたんで、そっちを見てみると、 凄く背の高い、端正な顔立ちの男性が、オレのほうを見て、立っていた。
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