1283人が本棚に入れています
本棚に追加
オレが視線を合わせた後も、ずっとこっちを見ていたし、さすがにオレもちょっと嫌だったから、「何?」て、訊いてみた。
それでも無反応だったから、汗拭きながら立ち上がって、「何か用?」て、睨みつけてやったら、
そいつ急に慌てて後ずさって、
「ごめん」
て、顔を隠しながら視線逸らされちゃって……。
*****
「オレ…そいつの気持ち、ちょっとわかるかも…」
「え?」
オレの隣で静かに話を訊いていた紫津木が、視線を前に向けたまま呟いた。
「たぶんオレもそこにいたら、同じような態度とったと思うから」
「?……そうなの?」
「ぁ……まさか、そいつが安堂とか言わねぇよな?」
と、無表情のままオレを見た。
「ぇ……違うよ」
紫津木は、ホッとしたように小さく息を吐いた。
今の表情は、安堂に向けられたもの…と、頭ではわかっているけど…ズキッと胸が傷む。
紫津木の表情に一喜一憂している自分に、改めて気づかされてしまう。
オレは紫津木にバレないように、小さく溜め息をついた。
最初のコメントを投稿しよう!