5.あの日

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オレが視線を合わせた後も、ずっとこっちを見ていたし、さすがにオレもちょっと嫌だったから、「何?」て、訊いてみた。 それでも無反応だったから、汗拭きながら立ち上がって、「何か用?」て、睨みつけてやったら、 そいつ急に慌てて後ずさって、 「ごめん」 て、顔を隠しながら視線逸らされちゃって……。   ***** 「オレ…そいつの気持ち、ちょっとわかるかも…」 「え?」 オレの隣で静かに話を訊いていた紫津木が、視線を前に向けたまま呟いた。 「たぶんオレもそこにいたら、同じような態度とったと思うから」 「?……そうなの?」 「ぁ……まさか、そいつが安堂とか言わねぇよな?」 と、無表情のままオレを見た。 「ぇ……違うよ」 紫津木は、ホッとしたように小さく息を吐いた。 今の表情は、安堂に向けられたもの…と、頭ではわかっているけど…ズキッと胸が傷む。 紫津木の表情に一喜一憂している自分に、改めて気づかされてしまう。 オレは紫津木にバレないように、小さく溜め息をついた。
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