5.あの日

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「ジャージで良ければ、オレの貸すよ。 予備で一着持ってきてるから」 背に腹は代えられない。 「ありがとうございます。お借りします。 えーと、板…垣さん」 「葵でいいよ。 その代わり、お願いがあるんだけど。 このあと図書室つきあって欲しいんだよね」     「それはいいですけど…」 「助かるよ」と、ジャージを一組渡してくれた。 ぅ……デカい……。   Tシャツは、ダボダボだし、ジャージは長いので、膝が見える位までまくった。 葵さんは、こんなオレの格好を上から下まで、舐めるように見ると、一言。 「彼シャツ? 萌える」 え?聞き間違い? 「オレ、男だけど?」 「わかってるよ。お前のほうがわかってないんじゃない?」 「お前じゃない。如月愛っていう名前があるんだ」 「愛ちゃんか」   「女みたいに呼ぶな」 「じゃ、出るよ」 オレの言葉を軽く無視して、更衣室の外に出ると、出待ちの女の子達が沢山いた。 こういう事か。 「板垣さん、この後の予定は? もし良かったら……」 「ごめんね。彼と図書室行く予定だから」 何か言いたそうな彼女達を無視して、足早に体育館を去った。
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