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その夜の三日月は赤っぽかった。
正志は七時すぎに、Sコーポの114号室に帰宅した。
このマンションは空き部屋が多かったが、いつの間にか、その214号室にカップルが入居したようだった。
「ほー……214号室に、新婚でも入ったのか……?」
正志は、いつものように缶ビールを飲みながら、ソファーでくつろぎ、テレビをつけた。
真上の部屋は、不気味なほど静かだった。が……やがて、ちょっとした音がして……
『あれ? ……どうしたの?』
『あなた……きょう……どこかの女性と一緒に、ホテルまで行ったでしょう……』
『あっ……いや、それは……違うんだ』
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