八月の蝉

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 夏休みのバイトは大型スーパー。  自転車で向かう道はセミが朝からうるさい。 うるさい。 うるさいっ!  八月蝉と書いて、うるさいっ!  制服に着替えて最初にやる仕事は、駐車場の掃除。  サッサ、サッサ、パコポコ、サッサ。 黙々黙々。  サッサ、サッサ、パコポコ、サッサ。 黙々黙々。  集めたゴミは近くのゴミかごに捨てる。  今日の朝番は5、6人? 広ーい駐車場にパラパラ散って、みんな黙々。  あれ?あいつ何してる? 多分あいつは同じ高校の男子だ。 中学ちがうから名前わからない。  ゴミかごの外でチリトリの中身全部捨ててる。 はぁ?  で、また掃き集めて捨てた。  またまたかき集めて近場の植え込みにゴミ捨てた。  おいおいおいおいおい!  それ、だめっしょ。 いくらなんでもダメだろ。 うちの高校、バカってフラグ立つ。  大股で駐車場を渡る。 暑い暑い暑い。 なんでこんなこと。  おい!    はい?    マヌケた顔だ。 同級生の女子として恥ずかしい。    お、おま?、おまえ何してるんですか! ゴミ、植え込みに捨てるバカどこにいるんですか!    え? ゴミ?    そうだ、ゴミだ。    あ。 あれゴミじゃなくって… えっとセミ。    セミ?    うん、セミ。 長い間土の中にいたろ? だから多分土の方が落ち着くかなと思って。    …なんだこいつ? なんだこいつ! なんだこいつーーー
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