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一組の教室に行くと、すでに殆どの席に生徒が座っていたが、なにかよそよそしい雰囲気で静かに座っていた。
全国各地から生徒が集まっているので、知り合いがいないためだろうか。
弘平のように自宅から通学する生徒はほとんどいないと聞いていた。事実、弘平の中学からは弘平一人しか入学していなかった。
通えない生徒は多くが徒歩15分の場所にある学生寮に住んでいるらしい。
教室の座席表は、黒板の代わりに壁一面に埋め込まれた巨大なコンピュータディスプレイに表示されていた。
座席表の隣には今日のスケジュールも一緒に映し出されていた。
弘平は自分に割り当てられている席に座り、今日のスケジュールをじっくり眺めた。
入学式は一時間程度で、体育館のような場所には集まらず、各教室で聞くだけのようだ。
オリエンテーションも昼前には終わることになっている。
ふと気がつくと、さっき校庭でオブジェを見ていた男が教室に入ってきた。ちらっと座席表を見ている。まさか同級生だったとは。
その男は弘平に気づき軽く右手を上げた。弘平は軽く会釈した。
男はうなずき自分の席に座った。
どう見ても厳つい先輩が後輩のところに来た図に見えてしまう。
弘平はディスプレイの座席表で男の名前を確認した
男は「鬼塚 豪」という名前だった。
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