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入学式の時間になり、担任が教室に現れた。
「担任の屋島だ。」
担任は名前を言っただけで、直ぐに入学式が開始された。
ディスプレイに理事長が映り、祝辞とAO受験の意味を生徒に説いていた。
小太りで、側頭部を残して髪の毛がおでこから頭頂部まで薄くなっている、いかにも理事長という感じの人がディスプレイに映っている。
だが弘平は何か違和感を覚えていた。僅かだが理事長の口の動きと音声の同調、いわゆるリップシンクが取れていなかったからだ。
最新の設備を使っているはずの学園で、こんな初歩的なことができていないなんて、と弘平はひどくがっかりしていた。入学前の期待が大きすぎたせいかもしれない。
弘平はそんな思いとリップリンクが取れていない映像の違和感のせいで、理事長の話や続く校長以下、来賓の挨拶もほとんど頭に入ってこなかった。
他のクラスメイトは別の意味でほとんど話を聞いていなかった。
座って祝辞を聴くなんて、居眠りの対象でしかない。
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