2人が本棚に入れています
本棚に追加
翌日
妃貴子は、腕に包帯を巻いた女を目にする
朝起きたら火傷したように腫れていたと話していた
偶然かもしれないが、呪いがあるならまさにこれだ
ぬいぐるみは首がちぎれたが、この女は生きている
ならば、もっと人に近づけたらどうだろう?
少しずつ、引きずり回す対象は大きくなる
人形、抱き枕、等身大の人形へと……
悲鳴が鼓膜を揺らした
人形が叫ぶなんて不思議だわ
蹴り付けながら、妃貴子は人形をみつめる
だが、まだ壊れてすらいない
いったい何が叫んでいるのかしら……?
辺りを見渡す
人形につめた髪。その持ち主の男が黒い影に引きずられている
ぼんやり見つめると、影も立ち止まり妃貴子をみつめた
揺らめく影は、輪郭しかわからない
泣きわめく男を見つめ、叫ぶ口から中にはいっていくかのように、影は薄まり消えていく
今なら、あれを引き摺れる
妃貴子は、呼び寄せられるように近付き、地面におちていた縄を拾った
あの影は、きっと私が生んだ影だ
ありがとう
あとは私が……
縄を拾った妃貴子は、穏やかな笑みを浮かべて
ずるりずるりと緩やかに歩きながら夕闇に溶け込んでいった
最初のコメントを投稿しよう!