ひきこ

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翌日 妃貴子は、腕に包帯を巻いた女を目にする 朝起きたら火傷したように腫れていたと話していた 偶然かもしれないが、呪いがあるならまさにこれだ ぬいぐるみは首がちぎれたが、この女は生きている ならば、もっと人に近づけたらどうだろう? 少しずつ、引きずり回す対象は大きくなる 人形、抱き枕、等身大の人形へと……    悲鳴が鼓膜を揺らした 人形が叫ぶなんて不思議だわ 蹴り付けながら、妃貴子は人形をみつめる だが、まだ壊れてすらいない いったい何が叫んでいるのかしら……? 辺りを見渡す 人形につめた髪。その持ち主の男が黒い影に引きずられている ぼんやり見つめると、影も立ち止まり妃貴子をみつめた 揺らめく影は、輪郭しかわからない 泣きわめく男を見つめ、叫ぶ口から中にはいっていくかのように、影は薄まり消えていく 今なら、あれを引き摺れる 妃貴子は、呼び寄せられるように近付き、地面におちていた縄を拾った あの影は、きっと私が生んだ影だ ありがとう あとは私が…… 縄を拾った妃貴子は、穏やかな笑みを浮かべて ずるりずるりと緩やかに歩きながら夕闇に溶け込んでいった
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