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翌日、中塚は中学時代の同級生で、ベースをやっている本間のもとに足を運んでいた。本間はすでに、他のバンドでベースをやっていた。活動も精力的で、月2はライブをやっていた。本間のいるバンドの演奏日に、中塚は本間達のバンドのライブハウスに足を運んでいた。
そして帰り際、本間を捕まえる。
「おっす本間」
本間はベースを担ぎながら振り向く。
「中塚、なんだよこんな所で」
「なんだはねぇーだろうよ。本間とこのバンド観に行ってやっていたんだぞ」
「本当か? 」
「ああ。本間、少し時間あるか」
「……。 少しなら」
「わりぃな」
ふたりは喫茶店に入った。
雑居ビルの建ち並ぶ、とても人通りの多い喫茶店の窓際の席で、中塚は身振り手振りを交えて、何か必死に本間を口説いているようだった。
この街は、住みやすく、遊びやすいと評判の街で、老若男女がたくさん訪れる吉祥寺という街である。
意外と騒がしい店内。
本間と中塚は向かい合い座っている。
本間は冷めきったアメリカンコーヒーを一気に飲み干して、
「考えとくよ」
と言い残しベースをかついで席を立った。
一週間後、本間はバンドを脱退したと、中塚に告げた。
GtVo中塚瑛太、Ba本間健、Dr桐生雅也、幼馴染の3名は、肩を並べて能天気な人込みの中を歩いている。
酒に女にバイクに喧嘩、わずかな金とロックンロールを握り締め、『ZERO★FIGHTER』を結成する。
それは1988年のことであった……。
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