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────バンド結成から4年と半年の月日が経っていた。
3人は大学生になっていた。
活動も高校時代よりも、ハイペースになっていた。
ファンもつき、『ZWRO★FIGHTER』は、オリジナルやカヴァーをやり続けていた。
しかし彼らはプロになる気はなく、あくまでも趣味志向として音楽を楽しんでいた。
ライブがおわり、いつものように、ライブハウス近くのカフェで、ミィーティングというなの、雑談会を催していた。
お気に入りのカフェ『マリオネット』。
本間が父親とともに幼少期より通っていたカフェで、店のマスターと本間は顔なじみでもあった。
この店は老舗のカフェで、先代から数えて30年近く、経営しているという。
カウンターに腰を降ろしている3人。
そんな彼らのもとに、ひとりの男が訪ねて来た。
「ギター募集の張り紙をみて、一緒になりたいと思い、声をかけさせて頂きました」
中塚はタバコを咥え、足を組み、右手を椅子の背もたれに垂らしながら、右斜め上をみつめた。
「今、いくつ? 」
「20歳、学生です」
「ギター歴は? 」
「7年くらいです」
背の高いその男は、暗くはないが、どことなく陰のあるクールな感じの、男だった。
「名前は? 」
「糸原直樹と言います」
中塚は黒いサングラス越しに、糸原の表情や仕草、言動、そして容姿を確認していた。
「明日、ポンタに来れる? 」
「ええ、大丈夫です。何時からですか」
「13時」
「わかりましたお伺いいたします」
「曲の方は……」
中塚が曲名を言いかけた時、糸原がそれをさえぎり、言った。
「パラレルボーイとジュヴィナイルの2 曲でお願いします」
「……」
「俺、あの曲好きなんです。2曲とも」
中塚の表情は真剣になった。
カウンターに座っている、本間と桐生は背中越しに、聞く耳を立てていた。
そのふたりの背中は、糸原を歓迎していた。
「それじゃ明日来てくれよ。まってるからよ」
「ありがとうございます」
中塚は立ち上がり、糸原に向かい右手の親指を立てた。
糸原は一度ばかりお辞儀をして、店を後にした。
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