かわいそうなせかいとかわいそうなゆうしゃ。

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 そして爆発のエフェクトが止むと、鬼の身体が壊れた跡に何かの塊がある。文字が浮かび上がり、〝鬼神の鎧〟と書いてある。デフォルトの鎧とはやはり輝きが違う。しかし、ひとつしかない。ネトゲってこういうものなのか。分配とか、いちいち話し合わなくちゃいけないとかいうのは、やっぱり僕には向いてない気がするなぁ。 『高田取っとけよ、腕最初に落としたとか功労者だし』木下が言う。  功労者? 『一番ダメージ与えてたのタカシだろ?』ヒロくんが言ってくれる。 『渡辺は、ちょっとテクありすぎだから。一人だけ強すぎてもつまんないじゃん。ハンデ必要でしょ、みんなが楽しくプレイするにはさ』  みんなが楽しく。  僕は別に構わない。みんなが満足するようにすれば、僕は全然構わない。   † 「あれはちょっとなぁ」朝の通学路でヒロくんは言う。 「ちょっとって?」 「鬼神の鎧はタカシが取るべきものだった」 「僕は別にどうでもいい」 「よくない」ヒロくんは僕を見る。睨むというのじゃないが、ちょっと目が険しくなる。「お前がよくても俺がよくない」  こういうことを言い出すヒロくんはちょっと苦手だ。幼稚園の頃からの幼馴染で、五年生になった今だって仲良くしてくれる。クラスの誰も僕のことは特に好きじゃないのに仲良くしてくれる。それはとてもありがたいことなんだろうけど、僕を心配し始めたヒロくんと話しているとやっぱり居心地が悪い。     
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