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『同じところっぽ』佐藤が言う。あえて『い』を省略するのがおもしろパフォーマンス、らしい。このへんの言葉の感覚はよくわからない。たぶんこういうのを身につけるのは、英語を身につけるのと同じくらい難しい。
そして木下が左を選ぶ。まるで最初からわかっていたみたいに、左に曲がってゆく。みんな楽しそうに、下層へ下層へと降りてゆく。
ボスは地底の奥にいて、勇者たちがわらわらと降りてゆくのを天井を見るようなポーズで見つめている。斧を持った赤い鬼型の巨人だ。パーティはまるでスカイダイビングみたいに落ちてゆく。ただ空から落ちていくわけじゃなくて、腹は地面に向けたままでも、背中にカメラを据え、くるくると回りながら落ちてゆくエフェクトもたぶん演出だろう。こういうのもゲームを面白くする、作り手のパフォーマンスなのかな。よくわからない。
そうして僕は降り立つ。巨人の喉仏に落ち、そこに剣を突き立てると、パーティの他のメンバーよりずっと大きいダメージの数字がふわっと浮かんで消える。四人とも、鬼を人とも思わず(当たり前だ)ぶん殴り、腕が片腕になったりして弱り、そしてついに僕の最後の一撃で大爆発した。
『なんでタカシだけダメ大きいの、武器同じだしレベル俺のが上なのに』
さっきNPCが弱点情報を言っていなかったのを聞いていなかったのか。
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