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「さっき、タクの持ってた須王兄妹の写真を見て考え込んでるようだったし、妹さんの気性については須王君からちょこっと聞いてるからさ」
「そうですか……」
そう言って藍李は目を伏せた。
心の内を明かそうか明かすまいかを逡巡しているようで、佐藤はそのまま辛抱強く待つ。
今、藍李の中では様々なことがシミュレーションされているはずだ。
話せばどうなるのか、話さなければどうなるのか。
それら全てを総合的に判断して、よりメリットの多い方を選択する。自分にとってもそうだが、それだけではなく周りの人間にとってのメリットも考慮している。
藍李は計算高い性格ではないが、そういったことを感覚的に行っている節がある。
だからこそ、周りは藍李を信頼しているのだと佐藤は分析していた。
藍李と須王は、実は似た者同士なのかもしれないな、とふと感じる。
やがて藍李は、意を決したように顔を上げる。その表情はしっかりとしていて、落ち着いていた。
「私、須王君の妹さん……櫻子ちゃんに嫌われてるんです」
「……いやに確信めいた言い方だね」
「はい、本人にそう言われましたから」
「……は?」
佐藤が目をパチクリとさせる。
まさか直接そう言われていたとは思っていなかったので、一瞬思考がストップした。
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