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「自分で思ってた以上に、大崎君に言われた言葉が痛かったんだって自覚できた」
「……?」
「『つまらない』って最初に言ったのは大崎君だったの。今までずっと忘れてたけど」
辛い過去を語っているはずなのに、そう言っておかしそうにクスクス笑う藍李の表情は何故か晴れやかだ。
「だからね、貴司に同じことを言われた時、条件反射で否定されたんだと思ったの。大崎君とのことがなければ、本当の意味がちゃんとわかったはずなのに」
「……彼の存在がとても大きいと聞こえるのは、俺の気のせいか?」
意図せず不機嫌な声音になるのを止められない。
藍李を見ると、相変わらず穏やかな顔で自分を見つめている。
「あの言葉がね、トラウマみたいになってたんだなぁって気付いたら、すごくスッキリして」
そう言った後、藍李は須王の首に腕を回した。
「大崎君とのことは苦しい思い出だったのに、いい思い出に変わった」
「藍李」
「貴司とのことは遠回りになっちゃったけど、だからこそ見えることもいっぱいあったなぁって……感謝した」
大崎とのことは完全に過去になり、これからは時々思い出して懐かしむような、そんな存在になったと、彼女はそう言った。
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